「しごとチャレンジ講座」実施報告(概要)

1 はじめに

 よりそいネットおおさかは、「2016年大阪府福祉基金地域福祉推進助成事業」に提案応募し、事業採択を受けました。この事業提案の一つが、「就労支援プログラムの提供」であり、“矯正施設や更生保護施設等と連携したビルメンテナンス訓練事業”を実施することでした。

無職の保護観察者の再犯率は有職者の4倍という統計もあり、また生活困窮者やホームレス等の支援機関等の利用時に「刑余者」であることがわかるケースあります。こうした点を踏まえ、この「就労支援プログラムの提供」が、矯正施設や更生保護施設段階から早期の就労支援を実施することで、犯す必要のない犯罪予防にもつながる-との狙いがあります。

 一般社団法人大阪ビルメンテナンス協会と更生保護法人和衷会及び愛正会、A´ワーク創造館(有限責任事業組合大阪職業教育協働機構)、よりそいネットおおさかの連携協力により、清掃の仕事に就くことを目標にした「しごとチャレンジ講座」が生まれ、訓練受講生6人が10日間の講座修了の修了証書を手にすることができました。

 そして、受講修了者5名が(6名うち1名はその後体調を崩し就労困難な状況)、それぞれ就労を実現することができました。

図 連携協力関係
図 連携協力関係

 

[ 主な連携協力と役割分担 ]

  • よりそいネットおおさか…全体の企画コーディネート、実施予算確保執行
  • 大阪ビルメンテナンス協会…清掃の仕事訓練の訓練プログラムの企画立案及び実施遂行
  • A´ワーク創造館…職業人マナー基本プログラムの企画立案及び実施遂行
  • 更生保護法人和衷会&愛正会…受講訓練生確保とフォローアップ

2 しごとチャレンジ講座の実施内容

しごとチャレンジ講座は、11/21日~12/5日の期間で10日間にわたって、座学及び清掃実技(ビルクリーニング作業)が行われました[講座カリキュラム(PDF)]。

学習①   11/21(月)

  1. 13:00~14:30 自己紹介と、これからの実習や働くことへの不安や目標を出し合う
  2. 14:40~16:10 職場で求められる上手なコミュニケーションの方法について学ぶ

 「しごとチャレンジ講座」の開講初日にあたり、関係者から講座開催の意図や受講の心構えなどの話がありました。そして、講座第1日目であることから、10日間一緒に受講していく仲間として協力していくために、お互いの自己紹介からスタートしました。

実技①   11/22(火)

  1. 10:00~12:00 安全と衛生、クリーンクルー(清掃人)のマナーについて(講義)
  2. 13:00~15:00 タオルの使い方(拭き方)について
  3. 15:10~17:10  ※会議机、椅子の清掃

講座2日目、初日の硬さも少しほぐれ、いよいよ“清掃のしごと”の実技1日目の講義・訓練が始まりました。「清掃」とは何か?…日頃は、何気なく行っている“雑巾がけ(タオルの使い方)”が、こんなにも難しく、奥が深いものであること、“掃除のプロ”、仕事としての“掃除”の意味を考えさせられた一日となりました。 「しごとチャレンジ講座」の開講初日にあたり、関係者から講座開催の意図や受講の心構えなどの話がありました。そして、講座第1日目であることから、10日間一緒に受講していく仲間として協力していくために、お互いの自己紹介からスタートしました。 

 

実技② 11/24(木)

  1. 10:00~12:00 洗剤・床維持剤の使い方について(講義)
  2. 13:00~15:00 床の掃き作業・拭き作業、ホウキ・モップの使用法について(実践)
  3. 15:10~17:10 ※自在ホウキ、ダストクロス作業の基本動作

講座3日目、“清掃のしごと”の実技2日目です。“床の清掃”と言っても、様々な床材-例えば、Pタイルやカーペット、石材などで、素材によって使う洗剤も違えば、道具も違う…当たり前と言えばそうだが、知らないことばかりです。

 

実技③   11/25(金)

  1. 10:00~12:00 ポリシャー(床などを洗い、磨く電動式の機具)の基本について
  2. 13:00~15:00  ※パッド台の装着、操作、手入れ
  3. 15:10~17:10

講座4日目、“清掃のしごと”の実技3日目です。“床の清掃”と言えば、ポリシャーを使って格好良く?やってみたい…と思うところです。ところが、ポリシャーという機械、なかなかこちらの思い通りにはいかないし、危険でもある。まずは、ポリシャーという機械のことをよく知ってから…。

 

実技④ 11/28(月)

  1. 10:00~12:00 床表面の洗浄実践(ポリッシャー操作・洗剤、バキューム操作、水拭き作業)
  2. 13:00~15:00
  3. 15:10~17:10 床表面の洗浄実践(床の掃き作業からワックス作業までの実践)

座5日目、“清掃のしごと”の実技4日目です。ポリシャーを使った床清掃の一連の流れを、各人が交代しながら訓練しました。まず、ポリシャーをかけて、バキュームで洗剤をふき取り、モップで拭き、ワックスがけ-までを行いました。

 

実技⑤ 11/29(火)

  1. 10:00~12:00 ビルメンテナンス業の紹介と清掃道具の名称について(講義)
  2. 13:00~15:00 ガラス洗浄の実践
  3. 15:10~17:10  ※ガラス洗浄に使用する用具と使い方の説明~タオル・化学タオル、スクイジー(窓ガラス清掃用ワイパー)操作について

講座6日目、“清掃のしごと”の実技5日目です。今日は、ビルメンテナンス業という仕事の紹介と、「清掃」と言っても幅広く、様々な道具や、洗剤などの資機材を使うことから、大阪ビルメンテナンス協会が作成発行しているテキストを使って学びました。また、ガラス洗浄の実際についても学びました。

 

実技⑥   11/30(水)

  1. 10:00~12:00 廃棄物について(講義)
  2. 13:00~15:00 カーペットの基礎知識と種類について(講義)
  3. 15:10~17:10 ※カーペットの特徴と種類、除塵作業、各種洗浄技法の説明

講座7日目、“清掃のしごと”の実技6日目です。今日は、清掃の仕事に必ず付随する「廃棄物」の処理対応等について学びました。また、様々な種類のあるカーペット床仕上げの洗浄方法について、素材の性質・機能、それらに応じた洗浄方法を学びました。

 

実技⑦   12/1(木)

  1. 10:00~12:00 トイレ掃除(実践)
  2. 13:00~15:00 
  3. 15:10~17:10 感染症と衛生について(講義)

講座8日目、“清掃のしごと”の実技7日目、最終日です。今日は、トイレ清掃の実際を学びました。また、感染症と衛生について学び、“清掃のしごと”の大切を再認識できました。

 

 

学習②   12/2(金)

  1. 13:00~14:30 講習を終えて、実習の中でうまくいかなかったことや不安になったこと
  2. 14:40~16:10 また自信を持てたこと等を出しあい、これからの仕事について考える

講座9日目、「しごとチャレンジ講座」の実技7日間を無事終えて、振り返りの座学です。“清掃のしごと”の何かの一端を知ることができたのではないか。受講生の中には、ポリシャーで失敗した経験があり、初めは機械を扱うことに躊躇する人もいたが、講師の方から丁寧な指導で、皆と同じように扱っておられた。また、1人を除き“清掃のしごと”に経験のない方ばかりで、本講座を通じて、「清掃の仕事に就いてもよい」との感想があったことなど、一定の成果がありました。

 

学習③   12/5(月)

  1. 13:00~14:30 就職に必要な履歴書の書き方を学びます。また、就職活動にあたって
  2. 14:40~16:10 不安なこと等を出しあい、様々な相談機関等の利用についても学ぶ
    ※講座修了式を実施

講座10日目、「しごとチャレンジ講座」の最終日の座学の3回目となりました。今日は履歴書の書き方、就職面接の受け方など、SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を行いました。

また、受講生6名全員が、1人の落伍者もなく、また欠席もなく受講修了となり、修了証書の授与並びに受講奨励手当支給を行いました。

(修了式の風景)

 

※写真は、受講生本人に配慮してモザイクしている。


3 今後の対応方向

 10日間の「しごとチャレンジ講座」について、受講生6人全員が講座修了証書を手にすることができました。また、講座終了後の受講生の就労意欲を確認したところ、概ね働く意思を表明され、かつ「清掃の仕事がしたい」旨の表明がありました。

 なお、大阪ビルメンテナンス協会で、本講座実施状況の「見学希望」を案内して頂きましたところ、実施期間内において協会会員企業の4社(6名)の見学がありました。

 講座修了生の就労意欲確認の個別面談を踏まえ、更生保護施設との連携も図りながら、ビルメンテナンス企業等様々なチャンネルでの就職のマッチングに努め、体調を崩し当面就労困難な1名を除く5名の修了生が就労を実現しました。

表 「しごとチャレンジ講座」修了生の状況

氏名

年齢

所属

講座修了後の状況

Aさん

42

和衷会

施設退所後、東淀川区で住居確保し生保受給。就労意欲もあり、就労の予定であったが、体調を崩し、入院治療が必要で当面就労困難。

Bさん

65

和衷会

施設退所後、知人紹介の働く予定先は、住居を確保できず就労も白紙に戻ったが、運転免許を生かし団体へ就職。東淀川居住で生保受給。

Cさん

64

和衷会

施設退所後、四条畷の自宅に戻る。就労意欲はあり、1月下旬にビルメン企業に面接・就職。

Dさん

64

和衷会

施設退所後、八尾市内で住居確保し、生保受給。就労意欲はあり、1月下旬にビルメン企業に面接・就職。

Eさん

57

和衷会

施設退所後、住吉区で住居確保し、生保受給。就労意欲はあり、現在エルチャレンジの清掃訓練(B型)に従事。

Fさん

62

愛正会

施設退所後、淀川区で住居確保し、生保受給。入所していた更生保護施設近くのA型事業所で清掃の仕事で就労中。

 

以上

(文責:瀧本)