《街のよりそいさん数珠つなぎ》インタビュー(二回目)

【インタビュー報告書・原稿】佐藤あつみ・森井花音
【インタビューに伺った日にち】2020年3月28日火曜日


《今回のよりそいさん》河野慎吾(かわのしんご)さん

1985年生まれ。工場でのマシニング(図面をもとにプログラムを作成し、素材を加工する工程)勤務経験後、事務員としてヘルパーの仕事に就く。その後、ヘルパーの資格取得をきっかけに5年の月日を経て、タイガースケアプランセンターの創立に携わる。現在は同センターで相談支援の管理を務める。趣味はゲーム。休みの日には娘さんとも遊ぶ育児パパ。出所者支援の集まりで三浦さんと知り会い、ご紹介いただいた。

ー普段、どのような活動をしているのでしょうか?

 簡単に言うと、障害者のケアマネジメントをしています。病気を持たれている方の在宅支援の計画だったり、ケアマネージャーとあまり変わらない仕事ですね。例えば、一般就労が難しい方に対し、一般就労を目指していく就労継続支援というのに繋いだり、家でご飯を作ることが難しい方や、病院に行くことが困難な方には、ヘルパーさんをつけるとか…。
 今いらっしゃる環境よりも、より良い環境になるようにアドバイスをしたりして、障害福祉サービスと、利用者さんを繋げる役割を担っています。時には僕が、「病院に一緒に行こうか?」と、実際に動いたりすることもあります。

✎ケアマネージャーとは?

 介護支援専門員とは、要介護者や要支援者の人の相談や心身の状況に応じるとともに、サービス(訪問介護、デイサービスなど)を受けられるようにケアプラン(介護サービス等の提供についての計画)の作成や市町村・サービス事業者・施設等との連絡調整を行う者(厚生労働省から引用)のこと。

ー計画を立てるだけでは無くて、支援の場にも足を運ばれるんですね。

 もちろんもちろん。例えば出所者支援の場面で、窃盗癖のある利用者さんが万引きをしたら、現場に駆けつけたりとか。障害福祉サービスで行うことが出来ない部分はカバーしたりしていますね。

ー今のご職業に就くに至ったきっかけについて教えてください。

 ストーリーはあまり無いんですが…。もともと僕はヘルパーをしていたんです。その時に、タイガースケアプランセンターの現在の代表者さんが、ケアマネジメントの会社を始めました。その頃は計画相談支援が世の中に浸透しておらず、本人さんが計画書を自分で作ったりしていた時代だったんです。いずれ必要となる時代が来るから、相談支援をやろうと思い、代表者さんが高齢、僕が障害の方を担当することになりました。なので創立した時からここにいるんです。

ーもともと学生の頃に福祉に関して学んでいたのですか?

 いいえ、全く。僕は工業科だったので、工場で働いていて、機械を操作してプログラムを作る仕事をしていたんですよ。でも今の工場は違うなと思って…。今のお嫁さんのお義母さんがヘルパーさんをしていて、そこで事務員を募集していたので、事務員として働いたのが、福祉分野に入るきっかけだったんです。それでヘルパー2級の資格を取り、翌日から現場に行き、気づけばヘルパーをしていました。その5年後に、タイガースケアプランセンターの創立に携わり働くことになりました。相談支援の資格を取るのに5年の福祉経験が必要なので、資格を取る良いきっかけだったと思います。なので専門学校なども行かず、独学でやって来ました。熱意があったらいけるはずなんですよ、誰でも!

ー出所者支援の場面では、具体的にどのような取り組みを行っていますか?

 窃盗をしてしまった方に対する支援が1番多いです。強盗など大きな窃盗はなく、ほぼ万引きです。本当はゼロにしたいんですが、やっぱり目の届かないところで万引きしてしまうのが日常です。
 僕は障害を持っている出所者を支援しているので、言葉が伝わらなかったり、高齢の方だと認知症の方もいらっしゃるので、コミュニケーションが難しかったりします。その中で万引きをいかにゼロに近づけるかを、ヘルパーさんや就労支援の方々とチームを組んで考えるということをしていますね。

ー加害者支援のやりがいは何でしょうか?

 僕が関わったことによって累犯が減ったら「やった!」って思いますね。1人では絶対に出来ないです。ヘルパーさんや就労支援を行う方々とチームでね。

ーチームは何人ほどで支援をされるのですか?

 ヘルパーさんと、就労支援の会社、家主さんだったり、コンビニの店長さんや、鉄道会社など福祉とは関係のない、インフォーマルな所にも協力をしてもらう場合もあります。
 地域住民の方などにも障害の特性や病状、事情を説明して、理解をしてもらえるようにしています。トラブルが起こると、その方の生活が施設になってしまったり…。そうすると施設から脱走して浮浪者になって、また万引きをしたりするので…。
 でも、僕の経験上こういう方達はゼロには出来ないと思います。例えば万引きをしないようにお金を渡しても、それを持って逃亡したりとか。お酒を飲むなと言っても、我慢が切れたときに万引きして飲むとか。それでも可能なかぎり、犯罪から遠ざけることが1番大切かなと思います。

ー犯罪を遠ざけるには、生きがいを見つけるなどですか?

 それが一番なんですが、お酒が好きだったら1日1合は飲めるようにしてあげるとか、折り合いを見つけていくっていうか…。縛るのは簡単ですが、絶対に反発されてしまうので。

ー心がけていることや、大切にしていることはありますか?

 まず、トラブルを防ぐためにも、不確かな情報は言わないということです。それと、自分の物差しで計らないということ、自分が思っていることを押し付けないということですね。僕が良いと思っていることも、その人の生活スタイルには合わないこともあるので。例えば、毎月貯金をした方がいいとか。その人にとっては毎月の貯金よりも日々の生活を豊かに充実させたい人なのかもしれない。そこは触れないように気をつけていますね。
 あとは病気や障害に抵触することも言いません。その人なりに工夫して生活していらっしゃるので、あまり触れないようにしています。難病は特に数がたくさんあるので、毎回調べると言うことは心掛けています。日々どのような事で困っているのかを聞き出す際に、心配しなくてもいいことを心配したり、言ったらダメなことを言ってしまったりしないように、事前に調べてから相談に当たるようにしています。ある意味そこがしんどいところでもありますね。

ー常に勉強をされているんですね。

 そうですね。聞いたことのない病名は調べます。大変ですけどね、楽しかったりもしますね。

ー支援をするうえでほしい制度などはありますか?

 ほしい制度はたくさんあります。例えば、病院の検査が入るとどうしても5時間とかかかってしまいます。しかし2時間縛りなど利用者さんと関わる時間に制限があり、どうしようもないケースもあるんです。
 あとは制度の壁も結構あります。例えば満65歳以上で介護保険と障害福祉サービスを併用されている方がいますが、介護保険は2時間ルールというものが存在し、1回のサービス間で2時間空ける必要があります。お風呂に入るサービスを受けたあとに病院に行くとなると、必ず2時間空けないといけないんです。しかし障害福祉サービスではこのようなルールは存在しないので、この時間を障害福祉サービスでカバーすることができます。その際に、介護保険のケアマネージャーともやり取りをしないといけません。一人一人、使用できる制度も異なるし、また先に介護保険を使い切るなどのルールもあります。
 私の事務所は両方行っていて、しかもケアプランに特化しているので、その点を話し合うことができます。しかし、他ではそうもいかないので、円滑に進めるためにも仕事は似ていますが、お互いケアマネージャー同士が知識を交換して、制度を知っていて欲しいという願いはありますね。

ー河野さんの今後の目標はありますか?

 タイガースケアプランセンターを自立支援センターにしたいです。今のような会社ではなく、地域に定着させてもっと発信できたら…。自分たちで動いた方が早いこともあるので、発信できる事業者が増えた方が、地域としても盛り上がるだろうと思います。

ー私たち(一般市民)に向けて一言お願いします!

 一人でも多く支援者になってほしいです。空き時間にヘルパーやってみようかなとか。あとは福祉の制度などを少しでも知ってもらえたら、困った人にお手伝いできるのではと思います。

 

《私たちの感想》

佐藤:インタビューどうだった?

森井:まず私は初めてのインタビューだったからすごく緊張した!

佐藤:私もだよ〜。でも、気さくな方で色んなことを教えていただいて、今回もすごくいい経験になったね。

森井:ケアマネジメントって聞くと、勝手に室内で作業をしたりするのかなって想像してたんだけど、ご自分から現場に出向いて支援されていて、そこがすごく意外だったかな。

佐藤:確かに。私は、地域の方やお店とも繋がりを作って、理解を得た上で支援をしているのがすごく理想的だと思った。

森井:あと、熱意があったらなんでもできる!って仰ってたことはすごく印象的だったなぁ。もともと異なる職業についていたのに、現在相談員として熱意を持ってお仕事されていて、河野さん自身がこの言葉を示してくれているなぁと思った。

佐藤:そうだね。短いインタビュー時間だったけど、熱意をもってお仕事に真摯に向かっていることがすごくわかったよね!私たちも熱意を忘れずに、活動して行こうね!

《実際に取材には行っていないメンバーの感想》

 利用者の方一人一人に対し、どのような支援が最もためになるのかを常に考えて活動をなさっているということがとても伝わってきました。そのような思いを抱く河野さんだからこそ、利用者の方も安心して相談や頼りにすることができるのだと思います。
 そして、利用者の方と福祉サービスをつなぐ、いわば架け橋としての活動のみならず、現場における支援もなさっており、その点においても支援に対する河野さんの熱意が体現されていると感じました。 (廣田貴也)

《よりそい写真館》

河野さん、ご協力ありがとうございました!