【インタビュー報告書・原稿】廣田貴也・森井花音
【インタビューに伺った日にち】2020年10月15日(木)
《今回のよりそいさん》福島正義さん
1980年生まれ、39歳。一般社団法人ホスピタリティジャパン 訪問看護ステーションsumireの代表を務める。趣味は居酒屋めぐりではしご酒を楽しむ。1週間に1回ジムに通い、パーソナルトレーニングを受けている。
ー河野慎吾さんから紹介されましたがどのようなつながりですか?
私の会社は、訪問看護と支援が必要な方々を老人ホームやグループホームなどへ紹介する事業を行っています。この事業における支援対象者への計画作成などの段階でケアマネジャーとつながっています。ケアマネージャーである河野さんともそのつながりですね。
ーどんな活動をしていますか?
基本的には、会社の代表という立場です。地域生活定着支援センターをはじめとする様々な施設からお話をいただき、罪を犯してしまったなどの理由で入居先がない方々の住まいの確保をするといった営業をしています。その営業を通じて、再犯の防止や見守りを含めた訪問介護の体制につなげていく活動をしています。中には、覚せい剤の治療をされている方や精神が不安定な方などもいらっしゃいます。そういった方に対して、服薬管理やメンタル面のケアといった形で訪問看護でのサポートも行うことで再犯防止にも貢献しています。
ーお仕事を始められたきっかけや過去について教えてください
18歳の頃、専門学校生として介護業界に入りました。そして介護福祉士の資格をとり、老人ホームでのヘルパーやグループホームの管理者などいった形で務めた後、今に至ります。老人ホームなどでは医療のことや看護のことを一緒に知ることができました。その後、起業してもやっていけるなとの思いを抱き、2年半前に起業しました。今は訪問看護事業と入居者さんを老人ホームに紹介する事業をしています。
加害者支援をすることになったきっかけは、本人の居場所をつくりたいという思いが一番の理由ですね。精神疾患の方やHIVの方、そしてエイズの方などは入居先がないため、そういった人にも入居していただきたい、また彼らを支援する人にもきちんと彼らのことを理解していただきたいと思っています。
ー加害者支援をしていくなかで苦労したことはありますか?
支援対象者の方が入居するまでの道のりが難しかったですね。企業側、つまり会社自体はその人自身をみて入居を受け入れますよって言ってくれるんです。しかし、支援対象者の方の背景をヘルパーさんに周知する際、その内容によっては「理解しがたい」「怖い」といった声があがってしまいます。会社側が受け入れたとしても、ヘルパーさんにやめられてしまうと元も子もないわけで、やっぱりそういった背景を持つ支援対象者の方は敬遠されて居場所が確保しにくいということがありました。そのような問題を乗り越える方法として、訪問看護を通じて病気のことを教えたり、時には研修を行って必要な知識を埋めていってもらうようにしました。そうすることで、ヘルパーさんが抱いているイメージや、わからない事に対して「怖い」と思う気持ちを解消していくようにしました。
ーお仕事をするうえで大切にしていることは?
介護保険制度が始まるまでは、役所が措置的にサービスを与えていました。「あなたにはここの住まいしかない」と。しかし介護保険制度が始まってからは、民間企業が増えてきて住まいを選べる時代になりました。なので気をつけていることは、私たちが探してきたところの中から「利用者に選んでいただく」ということですね。
◎介護保険制度とは?
→ 子どもや家族が行っていた親の介護が社会問題となり、家族の負担を軽減して介護を社会全体で支えることを目的として2000年に創設されたもの。
ー他機関との連携などをお考えになったことは?
どこの企業も強み弱みはあるので、個々が強みを出せるように連携したいですね。すべて支援できるということはなく、支援できる範囲があります。例えばケアマネジャーの河野さん(2回目のよりそいさん)は計画作成ができる。ケアマネさんにありがちなことは、引っ越しの手配、住所変更などを含めて全部引き受けようとすることです。本来のケアマネの仕事は、介護保険でいうところの給付管理なのに、個人に入り込んでしまいがちなんですよ(笑)。それって大変だと思います。その担い手として、「その役割は私たち訪問看護がしますよ」と。一つの事業所が抱えるのではなく、役割分担をして本人に合う一番いい方法を出し合ったほうが本人支援になります。本人にとっての選択肢はたくさんあったほうがいいと思います。
ー今後の目標を教えてください
例えば薬物依存の再犯者へ再犯防止の活動を行っている機関と一緒に、再犯防止を含めて精神的なフォローができたらなと考えています。訪問看護だけど、再犯防止のためのカウンセリングなどを行いたいと思っています。
《インタビュー後の感想》
廣田:初めてのオンラインインタビューだったから、対面とは違った難しさがあったし、そういった状況の中でインタビューを快く引き受けてくださった福島さんには本当に感謝しかないね。
森井:そうだね。今回はオンラインならではということで、直接福島さんがおっしゃった内容を書き起こし、その場で振り返りながらお聞きすることができてよかったかな。
廣田:僕のインタビューの感想としては、訪問看護と加害者支援がどのように関わってるのかなって疑問に思ってたんだけど、福島さんのお話を聞いて理解出来たよ。
森井:私も、前回河野さんにケアマネジャーのお話を伺い、その上で今回訪問看護のお話を詳しくお聞きしたから、福祉でどう連携しているのか知ることができて良かったと思った!
廣田:本当にそう思う。連携して支援していくのは本当に重要だと思ったし、福島さんが将来像としておっしゃっていたようにこれからもっといろんな連携が実現されていって欲しいな。
森井:今回で3回目のインタビューだったけど、様々な方のお話を聞いていくうちに加害者支援と一口で言っても、様々な支援方法があるということが知れたね。次はどんな方なのか気になるね。
《他のメンバーの感想》
福島さん、インタビューのご協力をありがとうございました。そしてインタビュアーの2人もお疲れさまでした!コロナ禍で、オンラインでのインタビューになったけれど、オンラインならではの進め方もできたようで、私たちにとっても新しい学びが多くありましたね。
そして特に、福島さんの「利用者さんに選んでいただく」という言葉がとても印象的でした。選択肢を多く確保し、利用者さんの希望に寄り添っているということが伝わってきました。「自分で選択できる」環境で納得をしたうえで生活を送れるということは、利用者さんの地域定着にもつながっていくのだと思います。(佐藤あつみ)