《街のよりそいさん数珠つなぎ》インタビュー(五回目)

【インタビュー報告・原稿】廣田貴也・佐藤あつみ
【インタビュー日】2021年7月26日(月)

《今回のよりそいさん》
 水時さん(大阪矯正管区更生支援企画課)
 林さん(大阪矯正管区矯正医事課)
 五家さん(大阪矯正管区更生支援企画課)
 田中さん(大阪矯正管区矯正医事課)

Q.早速ですが、普段どのようなお仕事をされているのでしょうか?

五家さん:大阪矯正管区は近畿2府4県の刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所、少年刑務所、これらを『矯正施設』と呼んでいるのですが、これらの矯正施設の適切な管理運営を図るための指導監督を主な業務としている機関になります。私が所属している更生支援企画課は、矯正管区で一番新しい課になります。業務としては、再犯防止推進法で、国と地方自治体と民間支援団体が連携して再犯防止に取り組むこと、となっていますので、これを受け、地方自治体への協力や、地方自治体と矯正施設が連携した取り組みの推進、矯正施設の広報に関することを行っています。

Q. 矯正医事課では医療業務を行っているとのことですが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。

田中さん:非行少年や犯罪をしてしまった人の医療をまずは良くしないと、改善や更生もないのです。そのため、矯正施設に入所した時点で全員に健康診断を行い、健康状態を判別します。入所してからは、8時間以上の睡眠や毎日30分以上の運動、管理栄養士の指導のもと作られた食事の提供などを設けることで身体面の管理をしています。

廣田:そのような業務を行っていらっしゃるのですね。医療業務を行うに当たってどのような思いを持っていらっしゃいますか。

林さん:矯正のために施設に入ってもらってるわけですから、入ったがために健康状態が悪くなったというのは駄目なんです。入所した時点で不摂生の人が多いので、一般的な医療は施すだけでも彼らにとってはプラスになっている部分があります。このように矯正という観点では、入所時のマイナスをプラスに変えることを目指しています。

Q.なぜこのお仕事に就かれたのでしょうか?

水時さん:当初は「人の役に立ちたい」と法務教官を目指していました。しかし叶わず刑務官として採用され、内部での試験などを経て、元は刑務官でありながら少年院でも勤務経験があります。

佐藤:なるほど。就職してからも試験などがありキャリアの可能性も広がるのですね。

Q.このお仕事のやりがいや、逆に大変なことを教えてください。

五家さん:再犯防止・更生支援施策というのは、これまでに既に行われている地域での支援を、更に充実・発展させ、罪を犯した人に対しても行っていただきたいというものだと思っています。ただ、地方自治体の方のご理解、ご支援、ご協力がなければ難しいところがあるので、そういったことを説明し、わかっていただくというところがまさにやりがいであり、大変なところかなと思います。

佐藤: 理解していただくためになにか工夫していることはありますか?

五家さん:大阪矯正管区では、一般の方向けの再犯防止シンポジウムなどの広報活動に力を入れています。ただこういった活動がコロナ禍で難しくなっているので、今は再犯防止や更生支援に携わる自治体、民間協力者に我々が出向いてインタビューをして、それをまとめて法務省のホームページに掲載するということを行おうとしています。「コロナ禍だから出来ない」ではなく、「コロナ禍だからこそ出来る」をテーマに活動を行っています。

また更生支援の一環で「農福連携」も注目しているのですが、農業を行う事業所に赴き我々の施策を説明したり、理解を得られるようにする取り組みを行っています。

Q.矯正管区内部ではどのように連携されているのですか。

五家さん:幹部会議を月に一回実施し、他の課が現在どのようなことをしているのか情報共有を行っています。また、部署毎の朝のミーティングでも情報共有を必ずするようにしています。

林さん:また、至急な案件の場合はすぐにお互いに連絡するようにもしています。

廣田:なるほど。情報共有をしっかりと行い、必要に応じて柔軟に連携されているのですね。

Q.犯罪からの回復や更生をどのように考えていますか。

田中さん:世の中に犯罪をする人がたくさんいるというのは市民の方々にとって良くない状態なんです。国がお金をかけることで、犯罪をした人を真人間にして、社会に帰し、またその社会の役に立ってもらう。そうすることで社会全体のマイナスが小さくなっていくのが、更生の大きなメリットなのかなと思います。

林さん:皆さんが思っている「あるべき姿」に向けて働きかける、力を加えるというのが更生かなと思っています。時代や場所や立場によってあるべき姿は違いますが、その時に正しいと思うことを働きかけていく必要があると思います。

〈感想〉

廣田:私たちのインタビューに対しても事前準備をはじめとした凄く真摯な対応をしていただいたように、大阪矯正管区のみなさんが犯罪をしてしまった人々の矯正や更生にとても真剣に向き合っていらっしゃることが伝わってきました。世間から理解、協力といった面における難しさなどもあるなかで、本当に様々な工夫をされていることをインタビューを通じて知ることができました。

佐藤:私は矯正管区のお仕事に関してあまり知識がなかったのですが、わかりやすく説明していただきとても勉強になりました!地方自治体や地域住民からの理解を得るためにSNSなどを使った広報活動を行っていることも興味深かったです。より加害者への支援が理解を得られるようになっていけば良いな、と改めて感じました。

水野:こちらの質問一つ一つにとても丁寧に回答いただきました。矯正、再犯防止に向けた取り組みとして一般の方の理解を得ることの難しさ、広報活動の重要性について改めて考えさせられました。また、コロナ禍という特殊な状況において様々な試みを行なっていることに感銘を受けました。

法務省矯正局のツイッターに、「街のよりそいさん」が大阪矯正管区に伺いインタビューした際の様子が掲載されました。

法務矯正局のツイッター@MOJ_KYOUSEIも是非ご覧ください。