地域生活定着支援事業とは

矯正施設入所中から面接やアセスメントを行い、出所後直ちに福祉サービス等につなげる業務について、「出口支援」と呼んでいます。高齢または障がいにより自立した生活を営むことが困難な人について、矯正施設と保護観察所が対象者を選定し、保護観察所が地域生活定着支援センターに支援を依頼して、支援が開始されます。

全国地域生活定着支援センター協議会より

特別調整の流れ

特別調整の対象者は

特別調整対象者は、被収容者であって、次に掲げる要件のすべてを満たす者となっています。

・高齢(おおむね65歳以上をいう。以下同)であり、または身体障害、知的障害もしくは精神障害があると認められること。
・釈放後の住居がないこと。
・高齢または身体障害、知的障害もしくは精神障害により、釈放された後に健全な生活態度を保持し自立した生活を営む上で、公共の衛生福祉に関する機関その他の機関による福祉サービス等を受けることが必要であると認められること。
・円滑な社会復帰のために、特別調整の対象とすることが相当であると認められること。
・特別調整の対象者となることを希望していること。
・特別調整を実施するために必要な範囲内で、公共の衛生福祉に関する機関その他の機関に、保護観察所の長が個人情報を提供することについて同意していること。

(平成21年4月 法務省保観第244号 法務省矯正局長・保護局長通達)

よくある質問

犯罪の被害者を支援するというのならわかるけど、なんで加害者を支援するの? そう思われる方も、多いことでしょう。加害者は、たしかに罪を犯した結果、刑務所に入っているわけですが、「困った人」である前に、「困っている人」でもあります。たとえば、新入受刑者のうち、高齢者の割合が12.9%、知的障害の疑いのある者が20.1%、精神障害のある者が14.8%です(矯正統計年報2020)。高齢者の罪名で一番多いのは窃盗、窃盗事犯のうち万引きが85%、万引き事犯の窃盗物品の金額は、3000円未満が73.3%です(犯罪白書2018)。高齢にともない、安定した収入源、住まい、支えてくれる家族などを次第に失い、にもかかわらず生活保護や福祉サービスにもつながらず、それらが多元的に重なって、犯罪行為に至っています。でも、いったん「犯罪者」とみなされると、特別視されて福祉関係者も手を引いてしまう。社会的な制度のなかで、唯一、対象者の収容にあたって、受けいれを拒否できない機関として刑務所があります。そうしたなか、資力や人脈がなく、コミュニケーションに課題を抱えている人が、微罪を繰り返して刑務所に何度も入所している現実があります。「地域生活定着支援事業」は、高齢・障がいにより、福祉的な支援を必要としている、矯正施設からの退所予定者・退所者に対し、矯正施設に入所中から退所後直ちに福祉サービスにつなぐ準備をしています。
基本的には同じです。ただし、犯罪行為にまでいたってしまう嗜癖行動や生活環境、また、犯罪行為を繰り返すことで身についた習慣や思考など、罪を犯した人特有の課題もあります。まずは本人の声をしっかり聴き、同時に関係者から情報を得ることで、支援の方針を見立てることができるはずです。
矯正施設から退所し、地域での生活をしていくにあたって、地域の福祉や医療機関、行政、住まい、就労など、さまざまな人や機関が支えることで、再犯から遠ざかる生活を促すことができます。よりそいネットおおさかでは、支援対象者についての理解促進や協力者拡大のため、さまざまな研修会などネットワーク活動にも力を入れています。


図の中に示している「衣食住の確保、心身の安全」「エンパワーされる人間関係」「新しいスキル、価値ある役割」という要素とこれらの順序性については、Veysey, Bonita, M.(浜井浩一(訳)) (2015)「‘離脱、異なるアイデンティティへの転換プロセス:将来有望な新たな方向性(訳)」『日本犯罪社会学会第41回大会報告要旨集』(日本犯罪社会学会、2015年)9-10頁を参照した。
一概には言えませんが、ひとつの数字として、定着支援センターの支援を受けた者(特別調整対象者)と支援を辞退した者との刑事施設への再入状況を比較した調査があります(法務省研究部報告56『高齢者及び精神障害のある者の犯罪と処遇に関する研究』)。


出典:令和4年7月30日 共生社会をつくる愛の基金シンポジウム地域生活定着促進事業の取組について-地域共生社会の実現を目指して-厚生労働省社会・援護局総務課総務課長資料