くろけん(支援者の苦労研究会)

よりそいネットおおさかでは、昨年度、いくつかの団体の方と支援者の「当事者研究」を試みてみました。「当事者研究」は、当事者が自分の「弱さ」を情報公開し、工夫を考えあう場で、さまざまな当事者団体が取り組んでいます。一方で、支援者こそ、自分の「弱さ」や「苦労」や「困りごと」を開示できず、ややもすれば抱え込みがちになることも、ままあるように思います。支援者が安心・安全に、自分の苦労を情報開示し、そこから工夫を考えあう場があれば、それは自分たちを支えあうことにもなるように思います。そこで、今年度からは「くろけん(支援者の苦労研究会)」と名づけて、関心のある団体で、取り組んでいきたいと思います。

概要

1.苦労しているケースのカンファに、よりそいネットおおさかからコーディネーターを派遣。

2.カンファでは、ひとつの方針を出そうとしない。支援者が、弱さや困りごと、苦労を開示し、対話することを目的とし、そこからさまざまな工夫やアイディアが浮かんでくることを目指す。

3.出された話をホワイトボードに書き出す。イラストなどもまじえると、なおよい。

4.ホワイトボードを見て、自分の「苦労」をながめながら、ほかの人といっしょに考えあう。

5.その際、必要に応じてリフレクティングを採り入れる。(ページ下部参照)

6.可能な場合は、支援対象者も入ったカンファにして、いっしょに考えあう。

 ルール

・ここで出た話は、ここだけの話にしましょう。

・上から目線、お説教、アドバイスはNGです。

・安心・安全な場にしましょう。

 

共有したい考え方

・ある方向に導こうとせず、対話そのものを大事にする。結果として、方向が見えてくればよいが、無理をしない。

・対話は手段ではなく目的。対話を続け、拡げ、深めることを目指す。

アドバイスは控える。「議論」「説得」「説明」は対話のさまたげになる。

・「正しさ」や「客観的事実」のことはいったん忘れる。

・不確実性への耐性(すぐ結論や方向性が出ないことに耐える)。

 

・1980 年代後半、ノルウェーの臨床家であるトム・アンデルセンらによって提唱された創造的な対話の方法。観察を観察する。支援者の観察をクライエントが観察する。

・リフレクティングは「反射」の意味。第三者がその問題について話しているのを、心の中で静かに受け止めて考える、内的な思考を伴う話し合いの仕方。「何事かをじっくりと聞き、考えをめぐらし、そして、考えたことを相手に返すこと」を意味する。

・「話す」と「聴く」を分ける。

「話す」=外的対話(他者との対話)

「聴く」=内的対話(自分との対話)

「話す」ことと「聴く」ことをていねいに「行きつ戻りつ」する。議論や討論とは異なり、あくまでも参加者それぞれの視点からとらえた「問題」について、おたがいに安心して話し、話されたことについて関心を持って聴き合う。

自分が考えたこと、思ったことを、すぐに明確に言葉にすることが苦手な人にとっては、「話す」と「聴く」が分けられていることによって、じっくりと自分の内的対話を進めることができる。一方、人の話をじっくり聴くことがなかなかできず、すぐに自分の考えを話したくなってしまう人にとっては、自分以外の多様な視点を得て、より豊かな内的対話ができる経験となる。

解決しようと熱心になればなるほど、問題を悪化させてしまう事態は、コミュニケーションの世界ではよくあること。指導などの「押しつけがましい」行き方に対して、リフレクティングでは、変化を生み出すことを基本姿勢とする。変化を生み出すのは適度な差異。

・ポリフォニー(多声的)であること。水平的ポリフォニー、垂直的ポリフォニー。

・対話のための余白をつくる。斜め性。

・パターナリズム(父親的温情主義)の徹底排除。

・人を変えようとしないことで、人が変わる。

・「対話」の反対語は「戦略」。心配事があると人は「戦略」に走りがち。

・相手をコントロールしようとする戦略的思考は、対話を閉ざす。

・不確実性への耐性。

 

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