【インタビューアー】廣田貴也・熊井遥・長谷川美南
【インタビュー日】2022年6月23日(木)
《今回のよりそいさん》
田村哲也(たむらてつや)さん
1977年生まれ。工場での勤務経験後、自身に合った仕事は何かを考えた結果、知的障がい者の方を支援する福祉の仕事の道へ。10年ほど勤務を続け、5年前に独立し、非営利活動法人グループホームエソラを立ち上げる。
Q.普段、どのようなお仕事をされているのでしょうか。
田村さん:特定非営利活動法人エソラの事業としては、共同生活援助、いわゆるグループホームを運営し、障がいを持たれている
方の住む場所を提供しております。具体的には生活支援だったり、相談支援だったりを行っています。
Q.お仕事の中で司法福祉に関わることについて教えてください。
田村さん:司法分野の福祉支援をされている方からの紹介で、エソラを利用されている方が一定数いらっしゃいます。そのような
方々は刑務所や少年院といった更生施設を経て、エソラに来られます。流れとしては、司法福祉の方から利用者の紹介
をしていただき、うちの施設で受け入れているというものになります。そのような形で司法福祉とつながっています。
廣田:利用者の中で、どのくらい方が司法福祉からの紹介の方になるのでしょうか。
田村さん:そうですね。割合でいうと全体のおよそ一割程度の方が司法福祉に関係した方になると思います。
Q.今のお仕事をされるきっかけについて教えてください。
田村さん:福祉分野での仕事を始めた際、知的障がい者の方を対象にした仕事ってなにをすればよいのかわからなかったんです
ね。ただ、仕事内容としては作業所で織物をしたり、体を動かしたりと一緒に過ごす仕事でした。そんな中で利用者
の皆さんは夕方になったらご自宅に帰られるものだと思っていたんですけど、中にはグループホームといった施設に
帰られる方がいるのを教えてもらって、グループホームって何かなって思ったんです。そのような思いがあって、当
時私が働いていた法人もグループホームを持っていたので、いい機会だと思いグループホームにも入って兼務させて
もらうようになったのがきっかけになると思います。そんな風に作業所、グループホーム、ヘルパーステーションを
勤務させてもらって、勤務するうちに自分でも独立してやっていきたいとの思いを抱き、現在に至ります。
Q.お仕事をされている中でのやりがいは何ですか。
田村さん:僕らの仕事は一言でいうと居場所を作るということなんですね。そのため、グループホームを利用された方が自分の
居場所として思ってもらえることがやりがいになっています。やはり、最初は施設に入ることに抵抗を持たれている
利用者の方も多いです。中には「半年ぐらいはお世話になりますが、それ以降は1人暮らしをします」と言っている
方もいました。しかし、そのような方が最終的には「ずっとここで暮らしたい」と言ってくださることもあったりし
て、居場所が作れていると感じれることが嬉しいです。
Q.お仕事をされている中で大切にされていることは何ですか。
田村さん:法人の理念である「ほんとうはなにがしたい?」「よりそう、むきあう」は理念であり、テーマでもあります。その
方の本当に思っていることを一緒に考え、受け止めることを大切にしていきたいと思っています。利用者さん、従業
員など関わる全ての人が、本当にしたいことを自分で発見できるような環境を作っていきたいと思っています。
熊井:だからこそ、研修などでコミュニケーションを学んで繋がれるようにという努力をされているんですね。
田村さん:そうですね。
Q.支援を更に充実させるために欲しい制度等はございますか
田村さん:我々はグループホームで、夜間の支援は夕方から朝まで支援させていただいております。その中でも、全ての人が入浴
やお食事の支援が必要かというとそうではないので。大事なのは相談だったりとか、そういう支援だったりするので、
そこを評価して、大切にして頂けるものがあれば良いと思います。
熊井:私たちは学校で心理学を学んでいることもあり気になったのですが、こちらの施設に心理士さんはいらっしゃいますか?
田村さん:心理士は今いてないですね。ただ、私自身、心理学の資格は持っていませんが、独学で学んでいたりはしています。
また心理士の肩書ではないですが、3ヶ月に1回は、メンタルコーチの方に来ていただき、考え方を伺っています。
心理士はいてないけれど、心理学的観点から相談できる所はいくつかあるといった感じです。
Q.今後の将来像や目標を教えてください
田村さん:今、私たちは、住む場所を作っているんですね。だから、次は働く場所を作っていきたいと思っています。
長谷川:それは、働く場所がないっていう人たちのために、そういう人が安心して働ける場所っていうことですか?
田村さん:そうですね。実際に、他の就労事業所はたくさんあってそこに通われている利用者さんもたくさんいます。そこで頑張
っている人、よくしてもらっている人たくさんいるんです。でも、何人かは仕事探すんだけど、自分に合ったところが
ない、っていう人がうちの利用者の方にもいるんです。そういった人たちが働けるような場所を作りたいです。なるべ
く自然の中で体を動かして、みんなで働けるようなところを作っていくことが近々の目標です。
長谷川:近々の目標とおっしゃっていましたが具体的な計画があったりするのでしょうか?
田村さん:森の中に作業所を作りたいと思っているんです。この間もキャンプ場の視察に行ってきて、薪をくべてきました。基地
は茨木につくって、夕方に帰ってくるっていうイメージの作業所ができれば良いなと。野菜作るところはよくあるんで
すよ。野菜を作るって、とても細かい作業と手間がかかる、手間がかかる仕事ほど障がいをお持ちの方に向いているん
です。効率を重視する訳ではないから、すごく丁寧にやってくれる。だから、農業と障がい者福祉ってすごく相性がい
いって学んだんです。でも、農業するにも軌道に乗るまでに時間がかかるから、森の中で農業しながらできることって
何かなって考えていて、今はキャンプ場を考えています。グランピングですね。
Q.一般の人々に伝えたいことはありますか?
田村さん:なによりも伝えたいのは「感謝」の気持ちです。グループホームって町の中にあるんです。そして、我々が運営してい
るグループホームは、場所を貸してもらって運営しています。だから、ご近所さんにとっては突然グループホームがで
きる形になるんですよね。その中でご近所さんは、受け入れて理解してくれている。地域のお祭りにも呼んでもらえた
り、以前、地震があったときも(大阪北部地震:2018年にあった震度6弱の地震)「あなたのところ家にひび入って
るで」ってお隣さんから教えてもらったんです。それから、「家の中からじゃ見えへんやろ」ってその人の家に上がら
せてもらって、ひびを確認させてもらえたんです。そのように助け合ってもらっている部分が大きいので、とても感謝
しています。
〈感想〉
廣田・熊井・長谷川:利用者の方々にとっての「居場所をつくる」というとても重要なことに取り組まれていることが素晴らしいと思いました。そのうえで、「居場所をつくる」だけに留まることなく、その先も見据えている田村さんの姿勢には私たちも見習うべきところがたくさんあると感じました。